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バテリ ・ 海巧というか海音寺先輩+1年
2007.09.07Friday

「な、原田1個しか貰っとらんの!?」


部活後の騒がしい部室。
それらをものともせず響き渡った声は、1年の吉貞のものだった。
吉貞が突然叫ぶのはよくあることであり、その内容も大したことはない。
なので、一瞬静まり返った室内もすぐに元の騒がしさに包まれた。

引退はしたが横手との俺試合を控えている為練習に参加していた俺も、例に洩れず着替えを再開しようとしたのだが。


「ちょっと海音寺先輩、聞いて下さいよ!」


勢い良く背後から服を掴まれ振り向くと、何だか嬉しそうな吉貞がいた。
困ってその後ろにいる沢口達に視線を向けると、処置なし、といった溜め息を吐かれた。
それに溜め息で返し、腹を括って吉貞に向き直ってやる。


「なんじゃ、原田がどうしたんじゃ」

「それがですよ、あいつあんなモテそうな顔してチョコ1個しか貰えんかったんですよ!」


へ、と間抜けな声が出た。
正直意外だった。

しかし、沢口の「原田はモテんのじゃなくて、渡しにくいだけじゃろ」という言葉に納得する。
まあ、同年代の女子には近寄りがたい存在だろう。
むしろ、一人でもいたという事実に驚くところかもしれない。






そんな騒がしい中、がちゃりと音を立てて部室のドアが開いた。
その先には、残って片付けをしていた原田と永倉。
吉貞の笑顔に嫌なものを感じたのか、眉間に皺を寄せている。

そんな顔も整って見える原田は、確かに「モテる」顔だ。
まぁ、本人にとってはどうでも良いことなのだろうが。


「ははーん、原田、お前チョコ1個しか貰えんかったんじゃろ? なら来年はこの吉貞様の方が上かもなぁ、貰える数」

「母親に貰ったお前にか」


その結果は、3年である自分は多分知ることは出来ないだろう。
そんなことを思いながら何気なく手を突っ込んだ制服のポケットの中に、ころんと何か丸いものを感じた。
取り出してみれば、それは飴玉。
未だ言い合っている二人と、自分の手の中を見比べる。


「原田」

「何ですか」

「これをやろう」


そう言って、飴玉を投げ渡す。
難なく受け取った原田は、予想通り不可解、という表情をする。


「…何なんですか」

「俺からのバレンタインじゃ。疲れたときには甘いものじゃろ。あ、でもそれハッカやから、そんなに甘くないぞ」

「……」

ははは、これで2個じゃ、と東谷が笑う。
それに続けて沢口も、吉貞の勝ちは遠くなったな、と笑う。


そんな和やかな空気の中。
やっぱり不可解だ、という表情のまま、それでもきちんと礼を言う原田を見て。

あぁ、らしいなぁと。
そう思って。

思わず自分も笑っていた。

+++++++

……海巧というより1年+海音寺先輩のほのぼの話…!
うん、ぐだぐだ!(笑顔)
まぁ良いよね。瑞垣が出てこない海巧はこんなもんだよ。


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