よろず短文置き場。
ジャンル・カプは、カテゴリ・タイトル等から推測して下さい(不親切)。
[PR]
2024.09.21Saturday
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
T&B ・ 兎虎
2013.01.26Saturday
いつもの喧嘩だと、思っていたんだ。
公私共にバディとなって随分経つが、根本的に僕達二人は正反対の性格をしている。だから小さな喧嘩はしょっちゅうだ。他愛のないことで揉めては、喧嘩をしていることにお互い気まずくなって、どちらからともなく謝って仲直りのキスを一つ。それで終わるような諍いだ。端から見たら喧嘩ばかりかもしれないが、僕らは恋人としても上手くいっていた。
だから、その日の喧嘩だって同じだと思っていた。きっといつもと同じ、明後日にはいつもの僕らに戻っているだろうと。
そう、僕は彼に甘えていたんだ。だから、自分の苛立ちを優先させて彼に背を向けた。
だから、彼がーーー虎徹さんが、いつもとは違う、傷付いた表情をしていたことに気付けなかった。
僕と虎徹さんが喧嘩をした夜から、今日で2週間。こまめに喧嘩するが、その期間は精々3日だった僕達の喧嘩最長記録だ。いつもなら、感情を溜め込むのが苦手な虎徹さんが僕に怒りを爆発させ、僕もそれに応えて不満を吐き出し、それで収束に向かっていたのだが、今回は虎徹さんの様子が違う。僕に声を荒げたりしない。その代わり、凍えるように冷たい視線で僕を見据えてくる。そんな彼の態度にどう反応したらいいのか戸惑っているうちに、事態は思わぬ方向から横槍が入った。
ぐしゃり。手の中で握り潰した雑誌の表紙で踊っていた文字を思い出す。曰く、「人気ヒーロー・バーナビー、共演女優と熱愛発覚!?」。それが全く根拠のないデマであることは、誰より僕自身が分かっている。常ならこんな記事、笑い飛ばしてくれる恋人だが、今回はどうだろうか。何せ、いつもとは様子の違う喧嘩の真っ最中なのだ。有り得ないとは思うが、万が一僕が浮気したなんて誤解されたりしたら。
嫌な想像を振り払うように、勢いよくヒーロー事業部のドアを潜る。事務の女性は席を外しているのか、室内にはこちらに背を向けた虎徹さん一人だった。きっと今日も返事は返ってこないのだろうと思いつつも朝の挨拶を口にすれば、少しの間の後に、おはよーさん、というやる気のない挨拶が返ってきた。
その事実に驚いて、それ以上に嬉しくて、その顔を後ろから覗き込んでーーー息を呑んだ。
何だよ、と怪訝そうにこちらに顔を向けた虎徹さんの視線に、いっさいの熱も感じないのだ。怒りの熱さも、愛情の暖かさも、軽蔑の冷たさも、何もない。0℃の、何の感情も込められていない、視線。
どうやら、事態は悪化の一途をたどっている。どうにか、しなければならない。
虎徹さんを手放すなんて真似は、僕に出来る筈ないのだから。
++++++
喧嘩バディに悶えたはいいけれど、虎徹さんが本気でで怒る理由がしっくりこなくて挫折した話
公私共にバディとなって随分経つが、根本的に僕達二人は正反対の性格をしている。だから小さな喧嘩はしょっちゅうだ。他愛のないことで揉めては、喧嘩をしていることにお互い気まずくなって、どちらからともなく謝って仲直りのキスを一つ。それで終わるような諍いだ。端から見たら喧嘩ばかりかもしれないが、僕らは恋人としても上手くいっていた。
だから、その日の喧嘩だって同じだと思っていた。きっといつもと同じ、明後日にはいつもの僕らに戻っているだろうと。
そう、僕は彼に甘えていたんだ。だから、自分の苛立ちを優先させて彼に背を向けた。
だから、彼がーーー虎徹さんが、いつもとは違う、傷付いた表情をしていたことに気付けなかった。
僕と虎徹さんが喧嘩をした夜から、今日で2週間。こまめに喧嘩するが、その期間は精々3日だった僕達の喧嘩最長記録だ。いつもなら、感情を溜め込むのが苦手な虎徹さんが僕に怒りを爆発させ、僕もそれに応えて不満を吐き出し、それで収束に向かっていたのだが、今回は虎徹さんの様子が違う。僕に声を荒げたりしない。その代わり、凍えるように冷たい視線で僕を見据えてくる。そんな彼の態度にどう反応したらいいのか戸惑っているうちに、事態は思わぬ方向から横槍が入った。
ぐしゃり。手の中で握り潰した雑誌の表紙で踊っていた文字を思い出す。曰く、「人気ヒーロー・バーナビー、共演女優と熱愛発覚!?」。それが全く根拠のないデマであることは、誰より僕自身が分かっている。常ならこんな記事、笑い飛ばしてくれる恋人だが、今回はどうだろうか。何せ、いつもとは様子の違う喧嘩の真っ最中なのだ。有り得ないとは思うが、万が一僕が浮気したなんて誤解されたりしたら。
嫌な想像を振り払うように、勢いよくヒーロー事業部のドアを潜る。事務の女性は席を外しているのか、室内にはこちらに背を向けた虎徹さん一人だった。きっと今日も返事は返ってこないのだろうと思いつつも朝の挨拶を口にすれば、少しの間の後に、おはよーさん、というやる気のない挨拶が返ってきた。
その事実に驚いて、それ以上に嬉しくて、その顔を後ろから覗き込んでーーー息を呑んだ。
何だよ、と怪訝そうにこちらに顔を向けた虎徹さんの視線に、いっさいの熱も感じないのだ。怒りの熱さも、愛情の暖かさも、軽蔑の冷たさも、何もない。0℃の、何の感情も込められていない、視線。
どうやら、事態は悪化の一途をたどっている。どうにか、しなければならない。
虎徹さんを手放すなんて真似は、僕に出来る筈ないのだから。
++++++
喧嘩バディに悶えたはいいけれど、虎徹さんが本気でで怒る理由がしっくりこなくて挫折した話
PR
COMMENT
カレンダー
最新記事
(05/25)
(01/26)
(05/05)
(03/25)
(11/20)
ブログ内検索
最古記事
アクセス解析