よろず短文置き場。
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2024.05.04Saturday
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T&B ・ 兎虎 兎の初恋ネタ半ば捏造
2012.05.05Saturday
「お前の初恋の子ってどんな子だった?」
汗を流しはしたが、情事の後の気怠い雰囲気を纏ったままそんな言葉を口にした恋人に、僕は目を瞬かせた。突然どうしたのかと考えを巡らせて、すぐ一つの可能性に行き当たる。
「あの雑誌、僕のインタビューも読んだんですね」
湿ったままの髪をタオルで拭きながら虎徹さんが横になっているベッドに腰を下ろせば、楽しそうな声で肯定の返事が返ってくる。
あの雑誌というのは、少し前にヒーロー全員で受けたインタビューが載っているものだ。ヒーローの素顔を探るべく、かなりプライベートに踏み込んだ質問も多かったのでよく憶えている。確か、その中で初恋の人についての問いもあった。
「どんな子も何も……あのインタビュー以上の情報はありませんよ。アカデミーを卒業して以来、会ったこともないですし」
「せめて可愛かったとか優しかったとかさ、何かしらエピソードあるだろ」
そう言われて霞がかっている記憶を探るが、どうにもその姿を思い出すことが出来ない。自分は記憶力が悪い方ではないのに全く思い出せないということは、その程度の記憶だったということだ。少なくとも、当時の僕にとっては。
……ただ一つ、ぼんやりと憶えているのは。
「……母に、似ていましたよ。顔とかではなく、雰囲気が」
そう、だからきっと僕は彼女を気にかけていたんだ。今はもういない、あの温かで理知的な面影を重ねていた。
今思えば、きっとあの初恋は恋ではなかったのだろう。ただ、思い出に縋っていただけだった。
「……ふーん」
小さな呟きに、はっとして視線を上げる。知らず思考に沈んでいたらしい。
視界に収めた虎徹さんは穏やかな優しい笑顔で、まるで子供の成長を喜ぶ親のような表情をするものだから、僕は居た堪れない気持ちになる。
きっと、虎徹さんは、僕も多少は復讐だけじゃない青春を送ってきたのだと嬉しく思っているのだろう。だが、僕は虎徹さんの恋人であって、子供のように扱われることを望んでいない。そもそも、ついさっきまで二人で行為に及んでいたというのに、何故こんな話をしなければならないのか。
そう思うと何だか腹立たしく思えてきた。……少しの仕返しくらい、彼は許容するべきだ。
そう決めて、その下着一枚の身体に覆い被さるように自身の上半身を傾けると、嫌な予感を察知したのか、虎徹さんがぎくりと肩を揺らす。だが、逃がす気はない。
→
汗を流しはしたが、情事の後の気怠い雰囲気を纏ったままそんな言葉を口にした恋人に、僕は目を瞬かせた。突然どうしたのかと考えを巡らせて、すぐ一つの可能性に行き当たる。
「あの雑誌、僕のインタビューも読んだんですね」
湿ったままの髪をタオルで拭きながら虎徹さんが横になっているベッドに腰を下ろせば、楽しそうな声で肯定の返事が返ってくる。
あの雑誌というのは、少し前にヒーロー全員で受けたインタビューが載っているものだ。ヒーローの素顔を探るべく、かなりプライベートに踏み込んだ質問も多かったのでよく憶えている。確か、その中で初恋の人についての問いもあった。
「どんな子も何も……あのインタビュー以上の情報はありませんよ。アカデミーを卒業して以来、会ったこともないですし」
「せめて可愛かったとか優しかったとかさ、何かしらエピソードあるだろ」
そう言われて霞がかっている記憶を探るが、どうにもその姿を思い出すことが出来ない。自分は記憶力が悪い方ではないのに全く思い出せないということは、その程度の記憶だったということだ。少なくとも、当時の僕にとっては。
……ただ一つ、ぼんやりと憶えているのは。
「……母に、似ていましたよ。顔とかではなく、雰囲気が」
そう、だからきっと僕は彼女を気にかけていたんだ。今はもういない、あの温かで理知的な面影を重ねていた。
今思えば、きっとあの初恋は恋ではなかったのだろう。ただ、思い出に縋っていただけだった。
「……ふーん」
小さな呟きに、はっとして視線を上げる。知らず思考に沈んでいたらしい。
視界に収めた虎徹さんは穏やかな優しい笑顔で、まるで子供の成長を喜ぶ親のような表情をするものだから、僕は居た堪れない気持ちになる。
きっと、虎徹さんは、僕も多少は復讐だけじゃない青春を送ってきたのだと嬉しく思っているのだろう。だが、僕は虎徹さんの恋人であって、子供のように扱われることを望んでいない。そもそも、ついさっきまで二人で行為に及んでいたというのに、何故こんな話をしなければならないのか。
そう思うと何だか腹立たしく思えてきた。……少しの仕返しくらい、彼は許容するべきだ。
そう決めて、その下着一枚の身体に覆い被さるように自身の上半身を傾けると、嫌な予感を察知したのか、虎徹さんがぎくりと肩を揺らす。だが、逃がす気はない。
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「……バ、バニー……?」
「あのインタビューで、僕は彼女に対して何もしなかったと言っていたでしょう?」
「お、おう……」
「僕は、彼女が笑っている姿を見るだけで嬉しかった。満足だったんです。だから、何もしなかった。彼女はいつも笑っていたから」
突然の僕の告白に、虎徹さんの瞳が揺れる。そこにあるのは、あくまでただの戸惑いだったが、それで構わない。
過去に嫉妬して欲しいなんて言わない。そんなことをしたって、お互い辛くなるだけだと分かっている。
ただ、ただ。せめて、僕はあなたの恋人で、あなたは僕にどうしようもなく愛されていることだけは分かっていて欲しい。
「でも、あなたに対しては違うんです。あなたがどんなに幸せそうでも、笑っていたとしても、……その感情と視線の向かう先が僕じゃないと嫌なんです」
……許せない、と呟いた僕に応えるように虎徹さんの頬が染まる。赤くなった顔を隠すために抱き着いてきた身体を受け止めれば、ぎゅっとしがみつかれる。
「……バニーちゃんのばか」
可愛らしい悪態に僕は笑う。どうやら、僕のささやかな願いは聞き届けられたようだ。
+++++++
今更ゴシップネタをやってみたら方向性があっちこっちしました。
バニーちゃんの初恋は、絶対母親と同じタイプの子だと信じてる。
そして過去には嫉妬しなくても現在には全力で嫉妬する派だと信じてる。
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