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よろず短文置き場。 ジャンル・カプは、カテゴリ・タイトル等から推測して下さい(不親切)。
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2024.05.04Saturday
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しや ばけ ・ 仁若
2009.07.05Sunday

陽が高く昇ったことを感じ、仁吉は書付けに落としていた視線を上げた。
長崎屋のしっかりとした家屋の中からでは太陽を確認することは出来ないが、恐らくもう半刻もすれば昼を告げる鐘が鳴るだろう。

若だんなの昼餉の支度をせねばと腰を上げれば、番頭も慣れたもので、微かな微笑を向けて送り出してくれた。
一太郎に甘いと両の親や仁吉たち兄やばかりが取り沙汰されるが、長崎屋で働く者達は、程度の違いこそあれ、皆若だんなに甘いのだ。
こんな昼日中の忙しい時間に、手代である仁吉が店を離れることを快く了承する程度には。


若だんなのいる離れへと歩を進めながら、若だんなの具合はどうだろうかと思いを巡らす。
調子が良かったのか、朝餉はいつもより食が進んでいたようだった。
しかし一太郎は体の弱いことでは、この人の多い江戸でも右に出る者はいないくらいの病弱さだ。
朝に具合が良かったとて、昼もそうであるかは分からない。

仁吉の思考が「若だんなの具合」から「調子を崩していた場合に飲ませる薬」へと移り始めた頃、よく知った居間へと辿り着いた。
若だんな、と襖越しに呼び掛けるも応えはない。
怪訝に思いながら目の前の襖を開く。

その瞬間。
仁吉の視界に飛び込んできたのは、畳の上で伏している若だんなの姿だった。





+++++++

暇なので携帯内の書きかけ整理その1。

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復活 ・ D18
2009.07.02Thursday

がつん。

角を曲がろうとして上手く曲がり切れず、勢いよく壁に肩をぶつけた。じんじんと痛みを訴えてくるそこは、明日には腫れているかもしれない。
ちらりとそんなことがディーノの頭を過ぎるが、走る速度を緩めたりはしない。既に約束の時間は過ぎているのだ。
彼がこのイタリアでマフィアとして活動するようになって数年。日本の地で会っていた頃に比べれば多少融通もきくようになったが、それでも相手はあの彼だ。少しの遅刻が命取り、今も待ち合わせの場所で待ってくれている確率は既に五分五分だ。

だが、急ぐディーノを嘲笑うように、空は黒い雲に覆われていく。まずい、と思う間もなく、霧のような雨が降り始めた。


もう、無理か。


転ぼうと何かにぶつかろうと止まらなかったディーノの足が、ゆるゆると遅くなる。
待ち合わせに指定された場所には雨を凌げるものはない。傘を持ち歩く習慣がない彼は、濡れるのを厭ってもう帰ってしまっただろう。
待ち合わせ場所まであと信号一つを残してディーノの足が止まった。
信号は、黄色。渡ってしまうことも出来たが、そうする気になれなかった。
いないと分かっているのにその場所に急ぐ自分が滑稽に思えた。

自分も帰ろうと踵を返すが、ふと名を呼ばれたような気がして立ち止まった。知らず爪先を見つめていた視線を上げて振り返る。
雨でモノトーンに染まった街。その中でもディーノは簡単に彼の黒を見つけてしまう。


なん、で。


雨音にかき消されて、小さな呟きが彼に届く筈はない。だが彼はそれを聞き咎めたかのように眉をしかめる。とても不機嫌そうに。
呆然としているディーノに向かって、ゆっくりとその唇が動いて言葉を紡いだ。


あなたは どれだけ僕を馬鹿にしたら気が済むの。


遅刻したことを言っている訳ではないことはすぐに分かった。
彼が、何に怒っているのかも。

信号が赤から青に変わる。
彼に近付くことを阻むものは何もない筈なのに、ディーノの足は動かない。
雑音のような雨音だけが耳に響いた。





+++++++

ディーノが思ってる以上にヒバリさんはディーノが好きなのにそれを認めないで疑うディーノに苛立ってるヒバリさん。
復活 ・ 獄ハル
2009.06.02Tuesday

にこにこ。

俺の目の前にいるハルは、そんな擬音が聞こえてきそうな表情をしている。
いや、"にこにこ"なんて、そんな可愛らしいものではない。"にたにた"まではいかないものの、"にやにや"くらいには可愛げのない表情だ。
意地でも"笑顔"とは表現したくない程に。

理由なんて分かり切ってる。昨日の腹いせだ。散々俺にからかわれたことを根に持ってやがるんだ。
今では多少反省してないこともないが、この表情の前で謝罪することは何となく躊躇われる。
だから、我が身に同じ災難が降りかかった今、せめて馬鹿にされることくらいは甘んじて受け入れようと思う。

赤くなってしまった鼻、それと同じくらい赤く染まっている目元を緩ませて、その口が言葉を紡ぐのを待つ。


お揃い、です。


……そう、きっと今の俺も、ハルと同じように鼻と目が赤くなっているんだろう。
そして、頬も。
同じように、赤く。

言葉より先に込み上げてきたものの為に口を開けば、二人分のくしゃみが同時に響き渡った。


(そんなの、嬉しい訳あるか畜生!!)





+++++++

アミダお題2・獄ハル/花粉症でした。季節外れになっちゃうと慌てて書いたんで短……げふんげふん(お前)。
ハルが花粉症になった翌日に獄も発症した話。幸いにも篠原は花粉症ではないので、症状が間違ってるかもしれませんすいません(調べろ)。
一人称の文が久しぶりな気がして楽しかったです。
アビス ・ ガイルク
2009.05.04Monday

※ED後捏造・ルーク帰還





あの日から、"朝"はガイにとって絶望でしかなかった。
それは、哀れで幸福な夢から覚める時間。誰より大切な彼を失う瞬間だった。

旅が終わったあの日以来、ガイは何度も夢をみた。
彼が、……ルークが帰ってきた夢を。
帰ってくるときのものだったり、二人きりや仲間達と過ごしているものなど、それは様々だった。けれど、それが朝の風景だったことは一度もないように思う。
きっと、無意識にでも分かっていたのだ。これらは全て夢で、現実にはルークは帰ってきてはいない。そして、"朝"はその事実を突き付けるものなのだと。


夢にみた数だけ、ガイはルークを失った。眠ることも、起きることも怖かった。
それは、ルークが帰ってきた今でも変わらない。
眠っている間に彼がまたいなくなってしまうのでは、そもそも彼が帰ってきたこと自体がまた夢なのではないか――
ガイが抱える不安をルークは何となく感じ取っているのだろう。
先に起きてしまったときでも、ガイが目覚めるまで隣にいる。そう、今も。
浮上する意識に従って目を開けば、視界に入るのは緋の髪と碧の瞳。見慣れた顔が優しく笑む。

もう起きようぜ。俺、腹減ったよ。何か食べる物あったっけ。

そうしてやっとガイは安心出来る。ようやく笑うことが出来る。

そうだな、ペールに訊いてみるか。俺も腹減ったよ。

そんな何気ない会話に、何よりも安堵する。
そっと伸ばした手で触れた柔らかな頬は、温かかった。



(きみが守り、きみを奪ったこの世界で、きみと過ごせる日々に感謝を捧げる)





+++++++

アミダお題1・ガイルク/朝食を(これから)一緒に食べる話。
……………。
……ご、こめんなさ……!(平謝り)
意味不明な上、お題無視にも程がある。
銀魂 ・ 土銀
2009.03.30Monday

言えないでいる言葉がある。
――だからこそ、聞きたいのに聞けない言葉が、ある。


いつの間にか馴染みになってしまった茶屋の長椅子で、銀時は団子を口に運ぶ。咀嚼した途端に広がる上品な餡の甘さは、銀時の懐事情では到底常連になどなれる味ではない。それでも店員と顔見知りになれる頻度で通えているのは、隣りに座る男の財布があるからだ。

(……いや、美味いから銀さん的には良いんだけどさ)

そう、銀時にはこの現状にあまり不満はない。この男――土方に会う度に甘味にありつけるのだ。不満があるはずもない。
だが、土方はここに来ても頼むのは茶だけで、あとは煙草をふかしているだけだ。わざわざここに来る意図が分からない。
最初の時こそ仕事や目当ての女性の線を疑ったが、そうでもないらしい。仕事にしては警戒しなさ過ぎるし、この茶屋の女性はもはや土方の声掛け待ち状態だ。何を思ってわざわざ銀時にここの団子を奢っているのか、銀時には分からない。

(別に理由なんて、……なんでも良いけどよ)

土方の意向など考えても分からないし、知る必要もない。何かの目的の為に利用されているのだとしても、その対価が甘味とこの時間なら悪くないと銀時は思っている。
土方本人ですら気付いていないだろう癖を見つけたり、見られてることに気付いた土方に軽く睨まれたり。そんな他愛ない時間を得られるなら、その理由が何であろうと良いのだ。

(あ、また唇擦ってる)

小さな癖に気付く度に、銀時の身の内で一つの感情が膨れていく。それが何を意味しているか、分からない程幼くはない。
だが、幼くないからその感情を言葉にして伝える気はない。事情は色々だが、とにかく言葉には出来ないのだ。
なのに勝手だとも思うが、いつか伝わればいい、そう思いながら最後の団子を口にする。
今日も何も変わらないまま、ただこの時間が終わっていくのを待った。



(同じ言葉を返してくれるなら)






愛してください、って






+++++++

ぐるぐる、というよりはほのぼの……?
土方の目的は銀さんの餌付けです。笑顔。



title by 確かに恋だった

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